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![]() その13 戦場における魔法の運用法 その2(攻撃魔法) |
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さて、お待ちかねの「攻撃魔法」です。 ファイアー・ボールにライトニング・ボルト! コールド・ビームにメテオ・ストライク! ファンタジーもののゲームなどでもお馴染みですし、何よりド派手です。 いちばん「それらしい」魔法であると言えましょう。 今回は、それらを考察してみることにいたしましょう。 |
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直接攻撃タイプ |
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一般的に言って、魔法の醍醐味は何と言ってもこのような系統のものでしょう。 ド派手な火球がひゅーんと飛んで行き、ちゅどーんと炸裂! 敵陣を爆砕! 無数の流星雨がふりし注ぎ、数えきれぬほどの敵を瞬時に殲滅! 現実世界の火砲やロケット弾による砲撃戦にも似ており、最も「戦場に似合う」タイプの魔法でしょう。 ただし、実際の戦場における火砲や銃器に比べると、魔法による戦闘には、ある意味致命的とも言える欠点があるのでした。 それは、「連続攻撃を行うことが困難である」ということ。 ドリュテスのジレンヌのごとく、相当に高レベルの術者であれば、破壊力抜群の魔法弾を間断なく連射! 敵を全て滅殺し尽くすまでは止むことを知らず……な〜んてことも可能でしょうが、普通の人間の魔道士たちでは、なかなかそうも行きません。 ファイヤーボールを数発も撃てば、もうへとへとになってのびてしまい、その日は何もできなくなる……という程度の術者が大半なのですし、また、魔法弾一発ごとの威力もその都度変化し、その命中精度や射程距離に関しても、その時点での術者のコンディションに強く影響されることでしょう。 これは、大砲にたとえれば…… 弾が数発しかなく、しかも撃てば撃つほど、その威力も、命中率も、射程も低下してくる。 というようなものでしかないですね。(何じゃそれは……) 更に言えば、(これは現実の野砲でも同様ですが)、人間の魔法使いというものは、自分自身の防御能力は、ほぼ皆無に等しいのです。 大仰なポーズで印を結び、ちんたら呪文を唱えようとしている間に、敵から弓矢を射かけられでもしたら、もうアウト! と言っても過言ではないでしょう。 これでは、その運用をよほど慎重にしなければ、使いものにはなりません。 効果を高めるため、まずはかなりの頭数を揃える。 各自の消耗を避けるため、それぞれ十分に休息を与えつつ、順繰りに働かせるようにする。 また、彼らを守るため、その周囲には「盾」となる護衛兵士たちを配備する。 施術の際の精神集中の妨げにならぬよう、前線からは一定の距離を取る。 最低限、この程度は配慮しないと、いたずらに貴重な魔道士を失う結果になってしまいます。 できれば前回説明した「全軍不可視」の魔法で、彼らの姿を隠してやりたいところですが……それを実行するためには、そのための別の魔道士たちが必要になりますので、けっこう大変ですね。 (人数を裂いて役割分担させるにせよ、魔力を消費することには変わりありませんので) これらのことを考えてみると、よほどに優れた術者が数多く揃ってでもいない限り、決して戦場の主役とはなりえないのだ……という、いささか残念な予想となってしまうのでした。 また、護衛役の兵士たちにしても、いわゆる「遊兵」というやつになってしまいますので、通常兵力の方も、十分な余裕が必要となりますね。 つまり、派手な直接魔法を主体とする「魔法軍」などと言うものは、よっぽどの大国でもない限り、とても運用することなどできぬ代物なのでした。 もっとも、これは一種の「正攻法」による、真っ当な運用の仕方です。 必ずしも頭数が十分ではなかったり、低レベルの術者しか集められなかったりということも、実際には多々あったことでしょう。 そのことをふまえた上で、それぞれの魔法の特徴と運用法を考えてみましょう。 |
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火球(火炎弾) | ||
いわゆるファイアー・ボール。 ゲームなどでは、最もポピュラーな魔法ですね。 ドラクエのメラに当たるやつですが、あれは対単攻撃魔法で、一般的な複数攻撃魔法たるファイアー・ボールとはちと特性が違います。 通常、ファイアー・ボールといえば、ターゲットの地点や空間点を中心とした一定範囲内に拡散し、その熱と爆風とで周囲にも影響を及ぼすことになっているのが普通です。 従って、「敵だけがそこに存在している場合に用いる」のが鉄則です。 敵味方入り乱れての乱戦状態であるにもかかわらず、考えなしにこのようなものを用いれば、味方をも殺傷してしまうことになりますから、十分に注意が必要です。 「火の球(ファイアー・ボール)」とは言っても、純然たるエネルギーの塊ですから、重力の影響はほとんど受けません。 従ってその弾道は、通常、ほぼ一直線にまっすぐ進むことになりますので、畢竟(ひっきょう)、狙いは「直接照準」で行うことになります。 擬似的な放物線軌道を描いて飛ぶように調整できる術者も存在しますが、相当に高度なコントロール能力が必要となりますので、普通はそのようなややこしいことはいたしません。ただし、敵との間に障害物があるような場合には、そのような「曲射」が必要とされることもあるでしょう。 重力の影響こそうけぬものの、長距離を進むうちに、大気との摩擦や温度差により、だんだんとエネルギーが減退して威力がなくなってしまいますので、そこに自ずと「有効射程距離」というものが生じてきます。 これは術者により、まったくまちまちで、平均値を求めるのも愚かしいほどです。 百メートルも離れたら、もはや「ネズミ花火」程度の威力しかなくなってしまう脆弱なものから、数キロ先の敵兵を数百人もまとめて焼き殺せるような超絶レベルのものまで、実にさまざまなのです。 実際に威力のある火球を放てる術者は多くはないでしょうが、それなりに派手な見栄えの火炎弾を撃つ程度であれば、一定レベルに達した魔道士たちには雑作もないことですので、「牽制」としてそのようなダミーの弾を撃たせ、敵を撹乱する目的で使用することもあります。 最初の一撃で本物を使い、その恐怖心の冷めやらぬうちに、ダミーを連射すれば(威力のない弾なら、ある程度連射は可能)、敵方はパニック状態に陥ることでしょう。 後は弓兵の一斉射撃なり、騎兵の突撃なりに任せておけば、味方の勝利は疑いありません。 かくて魔法使いたちの役目は、あっさりと終了するのでした。 |
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流星雨 | ||
メテオ・シャワーとかスター・バーストなんて名が付いていることもありますが、一般的にはメテオ・ストライクと呼ばれているやつです。 基本的に、無差別に一定範囲を焼きつくす(あるいはぼこぼこにする)、かなり物騒な魔法です。 敵との距離を十分に取っておかないと、自分も巻き添え食ってしまいかねません。 その意味で、火球よりもさらに要注意な魔法です。 ただし、相当高レベルの術者以外は、そもそもマスターしておりませんので、戦場で「魔法軍」として用いられるということは、まずあり得ないでしょう。 ちなみにジレンヌは、この魔法が大のお得意であるようです。 (さすがに「連続して」とまでは無理なようですが) |
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「ヴリトラの咆吼」もしくは「アグネアの怒り」 | ||
前々回で述べましたが、究極的な破壊魔法です。 現実世界の核兵器に匹敵するものとお考え下さい。 (といいますか、ほとんど「そのまんま」ですけど) 当然、相当な距離を離れておかねば、自分たちも吹き飛ばされます。 いえ、焼き滅ぼされます。 怨敵と諸共に自滅を欲するのでもない限りは、使うべきではない魔法なのでした。 ※使える術者は、事実上ジレンヌとクリュスタロスの両名のみしか残っておりません。 ですから、人間世界としてはあまり考慮する必要もない魔法なのですが…… あるとすれば、ただ一点。 ふたりを、決して怒らせないようにすること。 「ぶち」の馬にはご用心……(^^;;; |
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氷槍・氷刃 | ||
クリュスタロスが得意とする魔法です。 大気中の水蒸気を凝縮・冷却して「氷の槍」や「氷の刃」を発生させ、それを敵に投げつけたり、頭上より落としたりして攻撃します。 この際、奪った熱エネルギーは自らの体内の「魔石」に吸収しますので、当然のことながら、魔石がだんだん発熱してきます。それ故に、ある程度の本数を作ったところで、通常は限界に達します。 きちんとした「槍」を作り出すには、かなり高度な魔力のコントロールと精神集中とを要しますので、思いのほか難易度の高い魔法です。 そのくせ、炎熱魔法と異なり、あたりを加熱して自然発火や誘爆をもたらすような、副次的効果は望めませんので、事実上、こんな魔法を使うのはクリュスタロスただひとりとなっております。 逆に言うなら、周囲に害を及ぼしたくない場合には、理想的な魔法であるとも言えます。 ※奪った熱は、自分で炎熱魔法のために使うこともできますし、誰かに転送してやることもできます。 ジレンヌとクリュスタロスが、なぜコンビを組むことが多いのか…… その理由が、これでおわかりいただけるでしょう。 ジレンヌの無尽蔵とも言える炎熱魔法のエネルギーの供給源は、クリュスタロスだったのです。 クリュスタロスもまた、ジレンヌに熱を渡し続けることで、本来の限界を超えた氷雪魔法を使い続けることが可能になるのでした。 でこぼこコンビのようで、しっかりと魔法的にも理想的なコンビだったというわけです。(^^) |
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間接攻撃タイプ |
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上述の「火球」や「流星雨」を崖などに打ち込み、岩なだれなどを発生させて、その下を通行する敵を殲滅する……というような使い方をすれば、それもまた「間接攻撃」ということになりますが、ここで説明するのは、より本質的に「間接的」な魔法です。 次のようなものが考えられます。 |
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窒息 | ||
毒ガス魔法だと、一種の直接攻撃なんですが…… 火炎魔法を応用し、そのあたり一帯の酸素を消費し尽くして酸欠状態にすると、敵を「窒息」させることができます。 酸欠まで行かずとも、煙をもうもうとさせて燻(いぶ)してしまえば、たいていの人間は根を上げるでしょう。 一酸化炭素や二酸化炭素の中毒になるかも知れませんね。 屋外など、広い空間のある場所ではあまり効果がないかも知れませんが、建物内部での戦いなど、狭い室内が舞台となっていれば効果的です。 もっとも、あまり「人道的」とは言えないやり方ですが……(^^;;; |
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火炎の壁 | ||
攻撃というより、むしろ敵の足止めをするためのものですが……巨大な炎の壁を発生させて、その地点を封鎖し、敵の脚を止めてしまうための魔法です。 足が止まったところで、他の魔法なり弓矢なりで攻撃すれば、効果的に敵を痛めつけられるでしょう。 敵を包囲しようとする際に、十分な兵力が確保できぬような場合にも、応用することができます。 (極論すれば、炎の壁だけでも「包囲」することはできますから) |
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