その1
「魔法」の衰退期における「魔道士」たち

 主人公ギャメルらの時代における「魔法」文明は、はっきり言ってかなりひどく衰退している。
 魔法文化の中心であるはずのカルデリアにおいてですら、「魔道士」と呼称されるほどの上級魔術師は数えるほどしか存在せず、既に「魔法軍」を構成しうるほどの人員は集めえない。
 古代においては存在していた魔界と現世とを繋ぐ「門」の数々もほぼ全て失われており、それ故に、技量の十分でない魔道士たちでは、施術に必要なレベルの「魔力」を得ることができないという状況である。
 従って、この時代に魔法を用いることができるのは、次のような者たちに限られる。

★ 体質的に、自らの内部に何らかの「門」を有している者
 本来、「魔道士」とはこのような者たちのことのみを指す言葉であった。
 古代種族たるドリュテスたちなどは、皆これにあたる。また、ごくごく希にではあるが、“人間”の魔道士たちの中にも幾人かはこの「真の魔道士」たりうる資質の者が存在するといわれている。

 その「門」の持つ魔力の強さが、すなわちその「門の所有者」たる魔道士の限界力量となる。「門」を持っていさえすれば、それすなわち大魔道士の証……というわけでもない。また逆に、あまりにも強大な「門」を持って生まれているが為に、日常生活に差し支えがある……というほどの者も存在する。いずれにせよ、「門」を体内に持っていると、それと縁を切ると言うことができないため、魔道と無縁の人生を送ることが難しい。

★ 「門」を内在する特殊アイテムを所持している者
 それを使いこなせる技量を持つこと……が絶対の条件であり、当然、このレベルの者は他の一般的な魔道士たちよりもはるかにレベルが高い者たちばかりである。
 そのようなアイテムの数自体が数少ない現在、彼らは別格の魔道士として尊敬され、「長老」として魔道界に君臨している。

 ここでいうアイテムとは、必ずしも無生物であるとは限らない。 いわゆる「使い魔」の類に近いタイプの「もの」も存在しているようである。(ただし、その場合……どちらが主で、どちらが従であるのか、ちと微妙になってしまうきらいがあるようだが……)

★ 臨時に作られた、擬似的な「門」(結界ともいう)の有効範囲内に居る者
 一般的な「現代の魔道士」たちは、そのほとんどがこのレベル。
 「門」の有効範囲を一歩でも出てしまうと、たちまち魔力を失い、全ての魔法が使えなくなってしまう。
 何とも情けない話のようだが、それでも「門」の有効範囲内に立ち入れるだけ、まだ一般人よりは鍛えてあるのである。

 このような「門」には幾つかのレベルがあり、その「入門」可能な段階に応じて、「魔道士」や「魔術師」といった名称の呼び分けが行われている。
 また、このような「門」を(簡易的にせよ)作り出せるレベルの魔道士は、皆かなりのレベルの者たちであるが、それらはそれぞれ、前述の「門」アイテムなり、生来の「門」なりを備えた者たちである。すなわち、「門」無きところに新たな「門」は作れない……ということなのである。


★ 「門」を、自らの肉体上に作ってしまえる者。
 いちばん風変わりというか、非常識なやり方である。
 生来的に持つことができる「門」が、「火」なり「水」なり、いずれか一つの系統の属性のものだけに限られる(それ故、魔道士らはその得意とする系統がきちんと分かれる)のに対し、この方法であれば、事実上ありとあらゆる系統の「門」を自らの肉体に開け放つことが可能となり、万能魔道士たることができるのである。
 むろん、このようなことが可能であるためには、生来の資質もさることながら、かなりの修練を積み重ねなくてはならない。そうとうの危険を伴う技であるだけに、カルデリア魔道界では長年「禁じ手」とされていた。

 シャロンの用いた「魔法化粧」や「ボディペイント」は、この簡易版のようなものである。

  

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